見に行った日:2011.7.29
会期:2011.7.30〜2012.3.11
会場:箱根彫刻の森美術館
入口から1階、2階へと進んでいくうちに、少しずつ少しずつ、基さんワールドへ誘導していく、計算し尽くされた徹底的に美しい展示。
入口の使いにくい展示スペース。人の通る道だけを空けて、それ以外は岩塩で日本庭園。これまでの基さんの作品とはちょっと傾向が違うような、でも、違和感はない。竜安寺の石庭を連想させるそれは、基さんの作品の凛とした空気感や静寂さをわかりやすく示してくれる。
そして1階。床から天井まで積み上げられた塩のブロック。さらさらとした塩とは全く印象の違う、固められた塩のブロックは、塩という物質の強さを感じさせる。
それから、気になったのが、この1階の壁面の平面作品だ。これまでに見たことないタイプの作品じゃないだろうか。細かい渦巻きを書き込んだ小さなドローイング作品を樹脂で固めたものが1点。対面の壁に、謎の渦巻きが写り込んでいる写真作品。何を撮ったんだろう、宇宙のようでもあり、海の渦潮のようでもあり、ミクロにもマクロにも見える....。しばらく眺めていたがわからない。降参だ!あとで基さんに訊いてみよう。
2階に上がってみると、息をのむような広大かつ繊細な塩の「絵画」。「迷路」ではない。何か有機的なものが描かれているようにも感じる。繊細さはそのままに、新たな表現に向かいつつあることを感じさせる。足場が置かれ、床上3メートルくらいまで上がることができた。上から見下ろしてみた塩の絵画は塩の結晶のキラキラした白さと、その高さに、アタマはクラクラ、吸い込まれそうだった。吸い込まれないうちに、と、早々に降りてきたことは言うまでもない。
その後、1階の作品の謎を解くべく、質問させていただいた。
「壁に1点あった、あのドローイングを写真に撮って、反転させたんだよ」
という答えだった。うへー、これはヤラレた! 答えはそこにあったのに、気づかなかったよ〜!
そうそう、レセプションの作家挨拶の際、基さん、感極まって言葉に詰まっていた。涙していたようにも見えた。そんな基さん見たの、初めてだ。現地制作するタイプの作家だから、いろいろあってもおかしくないのだが、普段は感情をあまり露にしない人だ。この展覧会に向けての思い入れと、展覧会の完成度への誇りとが、よく伝わってきた。きっと、この展覧会は、この先、常に参照されるようなものになるんじゃないかなぁ。「あの展覧会がきっかけだったよね/はじまりだったよね」というふうに。
写真撮影:yum Haruki
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